お子さんを持つご家庭では、幼児教育について悩んでおられる方も多いのではないでしょうか?
幼児教育というと一般的には言葉や計算などの学習教育を思い浮かべると思います。
今回は、心の成長・人格形成をテーマとした教育法「モンテッソーリ教育」を紹介します。
モンテッソーリ教育の概要から、家庭で出来ること、子どもとの関わり方などについてお話したいと思います。
モンテッソーリ教育とは
イタリア初の女性医学博士マリア・モンテッソーリによって考案された教育法です。
彼女は障がい児の教育から始まり、貧困層向けの保育施設「子どもの家」を作りました。
その後子どもが本来もっている能力を、適切な援助により引き出していくモンテッソーリ教育が確立されました。
モンテッソーリ教育の本質は以下2点です。
- 自己教育力:子どもには自分を育てる力が備わっている
- 敏感期:幼児期は物事を爆発的に吸収する時期である
大人はなるべく介入せず、子どものサポートに徹します。
子どもの自主性を重んじる教育法といえます。
モンテッソーリ教育の特徴
モンテッソーリ教育の大きな特徴を3点、解説します。
モンテッソーリ教育でいう「お仕事」
子どもが教具を使ってする活動を「お仕事」と言います。
大人が仕事をするように、子どもの成長にとって必要な活動という意味で「お仕事」と呼んでいます。
「お仕事」は、「日常生活の練習」「感覚」「数」「言語」「文化」と言われる分野に別れていて、それぞれ敏感期に合ったものを一人で行います。
主役は子ども
大人の役割は子どもの手助けをすること。
子どもが興味・関心を持っている事を、自分で選び、自分のペースでできるように、時間や環境を準備することです。
大人は環境を整え、子どもが活動している時は、そっと見守る。
一人で活動を終え、「できた」と言う満足感や達成感を得ることが成長に繋がるのです。
大人の手助け
子どもには「自己教育力」が備わっていますが、適した環境がなければその力も発揮できません。
- 発達段階にあった活動(完全にできないけど、嫌になってしまわない程度の困難性があるもの)を用意する。
- 子どもサイズの教具を、自分で出し入れできる高さの棚に用意する。
- 活動しやすい環境を整える。
上記が大人の役割です。
また、子どもは意外と、大人や周りにいる人を見ながら学んでいます。
多くの言葉はいりません。
ゆっくりと丁寧に手本となる動きを示すことで、子どもはそこから学びます。
「お仕事」活動の始まりから終わりの一連の流れをやって見せ、子どもが活動に取り組み始めたら、そっと見守ってあげることが大切です。
子どもの邪魔にならないよう、活動中は声をかけず、子どもが自分で終わりにするまで待ちましょう。
モンテッソーリ教育の「お仕事」 家庭で実践編
モンテッソーリ教育には「お仕事」をするための教具があります。
しかし、特別な教具がなくても、家庭内で簡単に実践できます。
少し例を上げてみましよう。
日常生活の「お仕事」
子どもは大人サイズの環境に囲まれていると一人で行動することが困難になります。
そこで、環境を整えてあげる必要があります。
○身支度
用意するもの:子ども用の机と椅子、小さな鏡、ブラシ、ティッシュ、ゴミ箱、子どもサイズのハンガー、小さな洋服棚のようなもの
活動:朝起きて着替えて、着ていたものをハンガーに掛け、髪を整える。
○飲み物を注ぐ
用意するもの:小さいガラスのピッチャー、ビニールテーブなどでラインを引いたガラスのコップ、小さいタオル(フキン)、お盆
活動:棚から道具を運び、机の上に準備。ガラスのピッチャーからコップの線まで水を注ぐ。
○掃除
用意するもの:子どもが扱いやすいサイズの箒と塵取り、ゴミ箱(部屋の一角に置く場所を決める)
活動:掃除の時間になったら自分で箒と塵取りを使い掃除をする。
ここに上げたのは一例で、環境が整えば、子どもが興味を持ち自ら行える活動はたくさんあります。
子どもの様子をよく観察することで、「この子は今これをやりたいのかもしれない。」と言うのが見えてきます。
「その活動をするのには、こんな物を用意したらいいかもしれない。」と考えるのも楽しいものです。
使う道具の場所を決め、持ってきて準備、終わったら片付ける。
この流れは、始まりから終わりがはっきりと分かり、その事により活動の達成感をより感じることができます。
日常生活の「お仕事」・応用編
身近にあるものを使って、作れるお仕事。
感覚の敏感な子どもにとって、手に取ったときに感じる感覚はとても大切です。
そのため、プラスチックより陶器やガラス、木、竹、等、できるだけ自然素材を準備するのが好ましいです。
本物を使うことで「落としたら割れる」といったことも経験を通して知り、丁寧な扱いができるようになります。
派手な柄や飾りは無く、シンプルな物を使ってお仕事の準備をするのがいいですね。
○通す
用意するもの:かご、木製のビーズなど、紐
発達段階にあわせてビーズの大きさは変えていくといいでしょう。
かごの中に、木製ビーズと紐を入れて棚に置く。
活動:紐に木製ビーズを通していく。
○ボタン
用意するもの:3cm✕20cm程に切ったフェルトの端に、片方にボタン(またはホック)片方にボタンホールを付けたもの、かご
活動:ボタンをはめていく。
○空け移し
用意するもの:ガラスの小鉢2つ、スプーン・トング・箸(発達段階によりどれか1つ)、ビ-ズ・ビー玉など、お盆
お盆の上にビーズが入った小鉢、空の小鉢スプーンなどを乗せ、棚に置く。
活動:片方の小鉢からビーズなどをもう片方の空いた小鉢に、移動させる。
こういったものをいくつか用意しておくと、子供が自ら選んで繰り返し活動を行う姿が見られる様になるでしょう。
モンテッソーリ教育の「お仕事」 数・言語編
これまで、日常生活の活動を中心に書いてきましたが、モンテッソーリ教育には数、言語という分野もあります。
数の「お仕事」
子どもは数にとても興味を示します。
1から数を数えたり、量を比べたりなど、普段の生活の何気ない場面で見られるでしょう。
でも、数の概念はとても抽象的なものです。
具体的な物を使って、その概念を五感で体感しながら身に付けていきます。
例えば、0~9の数を書いたカードを用意し、その数にあったビーズやおはじきを並べていく。
5は1がこれだけ集まったもの、0は何もない、と言う様に。
この様に、抽象的な数の概念を、具体物を使い触覚的・視覚的に理解していきます。
理解が進むにつれて具体物を段々と抽象化していき、10までの概念を身に付けると、同じ様に具体物を使い十進法に進みます。
10が3集まると30、10が4集まると40…10が10集まると100。
このように段階を踏み、数量の概念を身に付けた子どもたちは、幼稚園の段階で4桁の四則演算や繰り上がり・繰り下がりといったことまで理解できます。
言語の「お仕事」
人間社会で生活していくために、言葉は不可欠です。
コミュニケーションを取るためはもちろん、自分の考えをまとめたり、気持ちを落ち着けたりすることもできます。
子ども達は産まれてから言葉のある環境に置かれ、特に2歳頃からは単語、次第に文章と爆発的に言葉を習得していきます。
これが、言語の敏感期です。
言語の敏感期は、聞く→話す→書く→読むという順番に、6歳頃まで続きます。
3歳頃までは母国語の土台を作る時期で、無意識的に会話の中から語彙を増やし、言葉の意味を理解していきます。
その後、感覚・運動の敏感期にいる子どもは、自分の体を使って活動をする事を欲しています。
大きめのひらがな文字を指先でなぞったり、親指・人差し指・中指の3本指の動きが洗練されてきたら、ペンを使って文字をなぞるといった活動の準備を整えると繰り返し活動する様子が見られます。
このような活動を経た子ども達は、文字を使って文の構成や言葉の機能を理解していきます。
まとめ
今回は、モンテッソーリ教育についてお話しました。
子ども自身が自分を育てる力を最大限発揮できるよう、私達大人は寄り添い手助けをすることがとても大切になります。
モンテッソーリ教育で大切にされている「敏感期」は、その一時しかありません。
この時期を逃さず、環境を準備することで大きな成長をしていきます。
子どもの内からの欲求に応えてあげられる援助ができるといいですね。