高校卒業を間近にして、不安を抱えている人は多いのではないでしょうか?
専門学校や大学に進むべきか、それとも就職か?
本記事では私立高校で進路指導を担当している、現役キャリアコンサルタントの私が皆さんに進路選択についてアドバイスできればと思い、書かせていただきました。
ぜひ皆さんの人生設計の参考になればと思います。
高校卒業後の進路(大学進学・就職など)について考える際の重要ポイント
高校生になると、卒業後の進路について考える機会が増えることでしょう。
どこの大学に進学しようかを考えて、大学辞典を手に取ってみたり、職業辞典を開いてみたりした人もいるのではないでしょうか。
しかし、細かな字で羅列しているものが多かったり、抽象的な内容が延々と書かれていたりするので、読むのを諦めてしまったという生徒も少なくありません。
進路を考えるときには、コツがあります。
適正&興味を考える
まず自分自身と向き合って、どんなことに向いているのか、あるいは向いていないかを考えます。
そしてどんなことに興味があるのか、はたまた興味がないのかについて考えます。
これら2つのことを考えることが、進路を考えるためのはじめの一歩なのです。
将来なりたい職業は?
このように、向き不向きと興味について考えた後で、次に考えるのは「将来なりたい職業」です。
たとえば職業レディネステストを受けると、自分の性格傾向に向いている職業にはどういったものがあるのか、ということが分かります。
それを知ることで、卒業後の進路のことを少し具体的に考えることができるようになります。
しかし、私の高校の生徒や進路指導を担当している先生方であっても、このような適性診断を使いこなしている方は多くないのが現状です。
適性診断結果をあなどらず、人生設計の材料としてうまく活用してみましょう。
進路選択を考える
さて、ではそのような場合に、どのように進路について考えるべきなのか。
まずは高校卒業後の進路にどのような選択肢があるのかを整理してみましょう。
大きく分けると、
- 学びながら将来やりたいことを考える(大学・短大など)
- 将来やりたいことのためにスキルを身につける(専門学校、職業能力開発施設など)
- 働いて収入を得る
の3つのパターンがあります。
自分はどのような進路を歩みたいのかを一度じっくり考えてみてください。
各進路のメリット・デメリット
さて、高校卒業後の主な進路には、
- 大学や短大
- 専門学校
- 職業能力開発施設
- 専門職大学・短大
- 海外留学
- 高卒就職
- 公務員採用
- 起業・フリーランス
が挙げられます。それぞれのメリットとデメリットについて考えていきましょう。
大学や短大への進学
- 「大学や短大への進学」のメリット
大学や短大に進学するメリットには、卒業時に「学士」や「短期大学士」という学位が授与されることが大きいです。
将来、就職活動や転職活動をすると、最終学歴がどこにあるのかということが見られることはまだまだ多いですので、そのときに有利に働くことがあるでしょう。
また、大学は教養を学ぶ場所ですので、高校までの教育ではあまり触れてこなかった最先端の専門的な内容を広く深く学ぶことができます。
哲学や心理学、高等数学や化学工学など、現実の社会と関わりの深い内容が多いので、面白く思える学問が見つかることでしょう。
また、短大のメリットには、幼稚園教諭や保育士、栄養士などの国家資格が2年間で取得できる上、早く就職できることも挙げられます。
- 「大学や短大への進学」のデメリット
デメリットとしては、大学では特に学費が高いことが大きいかもしれません。
不安のある人は、奨学金の活用についても調べてみると良いでしょう。
また、高校と違って、大学は自由度がかなり高いです。
大学4年間で自分がどのように成長したいかを自分で考えていかなければ、何も身につかないまま卒業となってしまうことさえあるでしょう。
- おすすめ勉強法(スタディサプリ)
ところで、大学受験においては、情報がきわめて重要です。
大学ごとの入試の過去問や大学入学共通テストの対策が取られていなければ、合格を勝ち取ることはできないでしょう。
株式会社リクルートの提供する「スタディサプリ」は、それらの過去問が無料で利用できるため、私の学校の生徒にはお勧めしています。
また、一人ひとりの得意科目や学習の進度に合わせてコンテンツを選んでいける点も重宝します。
大学進学のために塾や家庭教師を考えている人は、スタディサプリの活用も検討してみる価値はあると思います。
専門学校への進学
専門学校(専修学校 専門課程)は、入学と就職が直結しているというのが一番の特徴です。
- 「専門学校への進学」のメリット
資格取得や検定合格に力を入れているため、メリットとしては就職に直結する知識や技術を実践的に学ぶことがあります。
実習も多く、学校として就職まで丁寧にサポートしてくれる体制が整っていますので、将来なりたい職業が明確であれば、そこに進むための近道となるでしょう。
- 「専門学校への進学」のデメリット
一方で、入学後に「自分がやりたいことと違う…」と感じてしまったとき、進路変更は難しいというデメリットがあります。
また、実習が多いために欠席が多いと技術を身につけることができず、退学を余儀なくされてしまったケースも耳にします。
職業能力開発施設で学ぶ
「ハロートレーニング」を聞いたことがありますか?
高校卒業者などを対象として、就職に必要な職業スキルや知識を習得するもので、学卒者訓練と言います。
地域産業に必要な技能を持つ労働者を養成するための「普通課程」と、技術革新に対応できる高度な技能者を養成するための「専門課程」があります。
- 「職業能力開発施設で学ぶ」のメリット
メリットとしては、受講したコースの修了時に資格を取得することができますので、就職活動に有利になります。
- 「職業能力開発施設で学ぶ」のデメリット
一方デメリットとしては、専門学校と違って先生が就職を丁寧にサポートしてくれるものではありません。
あくまで知識や技術を学ぶところであり、就職に関しては自発的に行動することが求められます。
専門職大学・短大へ進学する
専門職大学・短大は、2019年からスタートした新しい制度です。
- 「専門職大学・短大へ進学する」のメリット
専門学校のように専門的な知識や技術を身につけて専門士の称号を得ると同時に、大学や短大のように卒業時には学位を得ることができることができるというのがメリットです。
- 「専門職大学・短大へ進学する」のデメリット
一方、専門学校への進学を考えていた高校生が選択肢の一つとして検討することが多く、目新しさもあいまって、競争率がかなり高いというのがデメリットでしょう。
また、まだ卒業生を輩出していないので、就職率や社会における位置付けが未知数だということも知っておかなければなりません。
海外留学をする
高校卒業と同時に海外留学をするという選択肢があります。
- 「海外留学をする」のメリット
10代のうちから海外にいくことで、語学力を身につけたり、様々な価値観に触れることで、日本国内では身につけにくい国際性を身につけたりできることが大きなメリットと言えます。
それによって海外の大学に入学したり、国際的な企業への就職を叶えたりすることができるでしょう。
- 「海外留学をする」のデメリット
ただし、海外渡航や授業料、生活費といった留学費用が嵩むことがデメリットの一つです。
また、高校卒業時点である程度の英語力とコミュニケーション力がないと、現地で十分な交流が育めないまま過ごしてしまうことになるかもしれません。
高卒就職する
高校卒業後に就職する生徒は、全国の高校生のうちおよそ18%を占めます。
- 「高卒就職する」のメリット
いち早く社会人となり、自分で収入を得て生活ができるようになることは、様々なルールで縛られていた高校生にとっては魅力的に感じるかもしれません。
高校時代のアルバイトよりも多くの稼ぎを得ることができますし、一人暮らしをして自立し、誰からも文句を言われず自分の好きな生活を送れることをイメージするのではないでしょうか。
- 「高卒就職する」のデメリット
しかし、高卒の初年度の年収は大卒よりも80〜100万円少ないです。
生涯収入では4,000万円の差になるという報告もあります。
さらに就職できる職種は限られていますし、専門的なスキルも身につきにくいことはデメリットと言えるかもしれません。
公務員採用
高校卒業の進路として、公務員採用試験を受けることもできます。
高卒の学歴区分で受験できるものには「一般職」と「専門職」があります。
高卒で受験できるものには、たとえば国家公務員だと、国家公務員一般職のほか、税務職員や刑務官、気象大学校学生などがあります。
- 「公務員採用」のメリット
メリットとしては安定した収入・充実した福利厚生・社会的な信用の高さなどが挙げられます。
- 「公務員採用」のデメリット
デメリットとしては、国家公務員であれば全国各地に配属される可能性があります。
また、学歴によって職種や給与体系が異なるため、高卒採用だとモチベーションが上がりにくいかもしれません。
起業・フリーランス
可能性としては、起業したり、フリーランスとして収入を得たりするという選択肢もあります。
ただしこれを選択するためには在学中に十分な準備をしておくことが必要になります。
起業したときに黒字化が見込める魅力的な事業アイディアがあれば、高校生のうちに起業し、卒業後に本腰を入れていっそうの収益化を図るという流れが現実的と言えるでしょう。
- 「起業・フリーランス」のメリット
メリットとしては、誰かに雇用されるのではなく、自力で会社を経営し、稼ぐ力を身につけることができる点が挙げられます。
- 「起業・フリーランス」のデメリット
しかし経営に関する法律や税の知識などは複雑であるため、社会人経験が少ない高校生が独学で身につけるのが難しいというデメリットがあります。
進路選択(まとめ)
以上、一口に高校卒業後の進路といっても、様々な選択肢があることがお分かりいただけたことと思います。
学校によって得意とする進路が異なりますので、大学進学サポートが充実しているところもあれば、専門学校との繋がりが強いところもあります。
また、家庭の方針もあると思いますので、あなたの一存で全てを決めるのは難しいかもしれません。
まずは自分がどうしたいのかという意志を、何となくでも良いので持っておくのが良いでしょう。
各進路の試験・面接対策、スケジュール
進路が決まったら、一般的に試験や面接などはどのように行われるのか、そして対策はどのように行うべきかについて簡単にご紹介します。
大学や短大へ進学するなら
- 一般選抜
大学ならば一般選抜(一般入試)がメジャーです。
毎年11月頃に前期・中期・後期日程の募集要項(願書)が発表され、翌1月中旬の共通テストを踏まえて出願します。
2月から3月にかけての個別試験に合格すれば、入学となります。
- 総合型選抜(AO入試)、学校推薦型選抜(推薦入試)
しかし、今後は総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜(推薦入試)の割合が高まっていくと言われています。
これらの場合は、「総合的な探究の時間」を通して、何を学んだか、どのような力がついたかということが注目されます。
総合型選抜であれば9月、学校推薦型選抜であれば11月から出願を行い、選考が始まります。
国公立大学であれば2月中旬に、私立大学であれば1月上旬以降順次合格発表となります。
短大であれば、学校推薦型選抜がメインとなります。
専門学校へ進学するなら
- 推薦入試
ほとんどの専門学校は推薦入試を実施しており、10月から願書を受け付けることが多いです。
このとき高校の推薦状が必要となります。
また、専願のみが原則なので、いくつもの学校を受験することはできません。
- 一般入試、AO入試
一般入試の場合も願書受付は10月からとなりますが、こちらは基本的に他の学校との併願が可能です。
試験の内容は学校によって大きく異なり、書類選考だけで合否が決まるところもあります。
また、志望動機や熱意をアピールするAO入試というものもあり、こちらは6月からエントリーを開始する学校が多いです。
一般入試の場合、定員になり次第締め切りとなるところがほとんどですので、早めの出願が重要です。
なお、選考では高校時代の出欠席、遅刻・早退の状況が重視されます。
職業能力開発施設で学ぶなら
ハロートレーニング(学卒者訓練)を受けるためには、最寄りのポリテクカレッジかハローワークに問い合わせを行う必要があります。
学科ごとに定員が定められているため、それについての説明を受けた上で出願し、試験を受けるという流れになります。
専門職大学・短大へ進学するなら
6月から入試要項が公開されることが一般的ですが、オープンキャンパスを随時行っていて、そこで様々な情報を入手することが入学への近道となります。
また学校によって試験方法も様々ですし、定員はかなり少なく設定されている場合が多く、出願期間が短いことがありますので、興味がある人は早いうちから情報収集を行っておく必要があります。
海外留学をするなら
いくつかの留学サポートセンターで説明を聞き、自分に相応しいプランがどれかを考えることから始めます。
渡航する国、留学先の学校、費用やサポートなど様々ですので、自分がどのような目的で海外留学をするのかをできる限り明確にした上で相談に行くのが良いでしょう。
安さを重視したために、留学先の学校が同じような日本人ばかりで、語学の練習にならないケースも耳にしたことがあります。
自分が重要視しているポイントを伝え、それに見合うプランを選ぶようにしてください。
高卒就職するなら
高校に高卒求人が来ていますので、まずは担任や進路指導担当の先生に確認してみましょう。
学校経由での就職は、ある程度は安心して働ける職場であると言えます。
また、インターネットの求人サイトを使えば、全国の求人案内を見ることができます。
公務員採用試験を受けるなら
試験の広告は、国家公務員であれば人事院、地方公務員であれば都道府県の人事委員会や市区町村役場の人事課が行っています。
新聞やウェブサイト等で公知されると同時に受験要項が発表されるため、早めに取り寄せることが肝心です。
公務員試験独特の「一般知能」という試験が半分を占めるため、高校での学習のほかにこの勉強が必要になります。
また、教養、専門、作文、面接など様々な試験が課されるため、早いうちから受験対策に取り掛かりましょう。
起業したり、フリーランスになるなら
高校在学中に起業や独立しても収入を得ていける働き方を、ある程度確立していることお勧めします。
高校卒業直後に一人で生きていけるほど、世の中そんなに甘くはありません。
明確なプランがない場合は、いったん企業に就職してみることをおすすめします。
会社はどうやって利益を出しているのか、雇用・財務など、あらゆることを間近で学ぶことができます。
その後に起業をした方が成功する可能性は高いでしょう。
目標別おすすめ進路
ここまでを読んでみて、いろいろな進路があって、どれが自分に合っているのかわからなくなってしまった…という人もいるかもしれません。
そのような人のために、目標別のおすすめ進路をご紹介します。
- 迷っている方には「大学・短大への進学」がおすすめ
いろんなことに興味があって、どれか一つに絞れないと悩んでいる人には、大学や短大への進学がお勧めです。
大学で様々な教養に触れながら、興味を絞っていくことができるからです。
- やりたいことが明確なら「専門学校への進学」がおすすめ
既になりたい職業が明確で、自分の性格的にもそれが向いていると確信できるならば、専門学校で実践的な知識と技術を身につけることをお勧めします。
- 働きながらスキルアップを目指すなら「職業能力開発施設」がおすすめ
家庭の金銭的な事情から、一刻も早く働き始めないといけないという人もいるでしょう。
その場合は高卒就職という方法もありますが、どうしても給料が安く、何年経っても満足できる収入が得られない場合が多いかもしれません。
そのような場合は、働きながら原則無料で専門技術を身につけられる職業能力開発施設に通って、スキルアップを図るという方法もあります。
まとめ
さて、今回は、高校卒業後の進路をどのように決めれば良いかという悩みについて、キャリアコンサルタントの立場から様々な進路とメリット・デメリットについてご紹介しました。
将来のことについては、学校の先生や周りの大人から、いろいろなアドバイスを受けることでしょう。
しかし、あなたの将来はあなた自身のものです。
根拠のない噂に振り回されず、進みたい道を考えていってくださいね。